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一枚絵で書きm@ster ss:お菓子を囲む少女たち


トリスケリオンP主催企画 一枚絵で書きm@ster

企画ss:お菓子を囲む少女たち

・ ・ ・

お久しぶりです。チーズが主食な鶏のふじゃんです。
今回のssは「一枚絵で書きm@ster」という企画に提出したssです。企画の概要は上記のリンクからお読みください。
第一回の今回は晴嵐改さんの描かれた一枚絵を元にみなさん、ssを書き上げました。

まだみなさんの作品を読んでないのでこれをあげたら徐々に見て参ります。
企画ssはどれもレベルが高いと風の噂で聞いたので、楽しみでもありちょっとした恐怖も感じております。

・ ・ ・

読まれる方は続きからどうぞ









 お昼終わりの静けさに包まれた事務所内の一室。
 ソファに腰を降ろして携帯を開き、メール画面になるまでキーを操作する。一通の既読メールを画面に表示させた。

  [件名:じゃじゃーん!]
  [本文:オフで暇だったから朝からプリンタルトを作ってみたの。これから電車に乗って事務所まで持っていくから、一緒に食べようね]

 携帯の操作キーの下へ移動するボタンを押し、スクロールしていくと件の写真が携帯の液晶に広がる。
 八等分に切り分けられたタルトはまばらな焼き目をしていたが黒焦げの部分はなく概ね狐色に仕上がっていた。
 振り掛けられた粉砂糖は余熱で溶けてしまったのだろう、若干の粉雪は残しつつも殆どが地面たるプリンに吸収されているようだった。
 プリンのまったりとした甘さと粉砂糖の微細な甘さを想像するだけで、唾液が口の中に溜まってきてしまう。


一枚絵で書きm@ster



 「美味しそう」
 「千早、またさっきのメール見てるの?」
 後ろから真の声が掛かる。
 午後から仕事がない私は、二時間ほど前から届いたメールを何度か読み返していた。真はそんな私の姿を何度も見ていた。
 「だって、美味しそうじゃない?」
 ソファに座っている私は後ろで立っている真に画面を差し出した。

 「美味しそうだと思うけど、このやりとり、何度目か知ってるかい?」
 「五度目よ。それくらい私だって覚えているわ」
 いやいや、と真が苦笑する。その意味がいまいちわからない。
 「春香のこととなると途端に天然なところを見せるんだから、千早は」
 「どういうことよ?」
 天然の意味が本当にわからなかったから体ごと真に向けて聞き返す。
 先程より歯を覗かせながら苦笑いする真は後頭部を掻いた。
 

 デレデレってことだよ。


 そう呟きながら後ろを向いてこの場から離れてしまった。
 「ちょっと、真。意味がわからないわよ」
 背もたれに両手をかけて身を乗り出すように真に言葉を投げた。
 しかし反応は返ってこないので、真の遠くなっていく後ろ姿を目で追いながら考えてみる。

 デレデレ……私は、そんなつもり、ない。

 ……ただ、春香の作るお菓子はいつも美味しいから、ちょっと期待してしまうだけ。
 たまに小麦粉を頭から被ったとか、バターを室温で溶かそうと放置してしまったらドロドロになったとか。そんな話も聞くけれど。

 でも失敗もなく見事に出来上がったときは、今回みたいに写真付きのメールをくれる。
 写真と少しの電子文章だけで、お菓子の味はもちろん、作者である春香の笑顔や達成感、アクシデントの様を想像する。
 料理の過程なんて楽しくないと思っていたのに。
 けれど一流のシェフや板前が腕を奮う姿ではなく、何気ないはずのお菓子作りの一幕を想像することが楽しいと思った。

 それは多分、春香だから。
 
 
 「嬉しいなぁ、千早ちゃん」

 
 私の名前が挙がったから、慌てて後ろを向いてソファに座りなおした。
 白く僅かに光沢のある箱を手に持って、にんまりと笑った春香が私を見ていた。
 「お、はよう。春香」
 まさか後ろにいるとは思わなくて、曲がりなりにも春香の事を考えていて。だから妙に声がどもってしまう。
 「おはよう、千早ちゃん。今日は小麦粉を頭から被らなかったよ。あ、バターも溶かし過ぎなかったんだ」
 「なんで……」
 私が呟いたら春香が小首を傾げた。
 無意識だった? そう問われて、自分の表情がゆっくり湖を凍らせていくように強張るのがわかった。
 
 「春香の作るお菓子はいつも美味しいーってところから聞いてたんだけどなぁ。千早ちゃんの独り言」
 
 まさか声にだしていたなんて、失念だった。
 表情の氷は一気に溶け、代わりに火山が出来上がって沸々と煮えたぎってくる。
 春香と目が合わせられない。
 だから彼女の表情はわからないけど、きっと頬が緩んでいるに違いない。春香は、素直にこういうことに喜ぶ子だから。
 でもこの顔から火が出るような独り言が春香に聞かれただけだからよかった……。

 「千早、そういうのがデレデレっていうんだよ」
 「真!?」
 「へへ、ボクも聞いちゃったー。千早の無意識で出る発言はほんっとデレッデレな女の子っぽい発言だよね」
 ボクも見習わなきゃ。のん気に言葉を漏らす真の両手にはお盆にのったマグカップが3つ。スティックシュガーとミルクも雑作にのっていた。
 マグカップから立ち上る湯気からコーヒーの香ばしくも苦々しい香りがする。
 
 「砂糖とかミルクの数がわかんないから適当に持ってきたよ。春香の作ってくれたタルトと一緒に食べよう」
 白い歯をだした彼女の笑顔は、なるほど、女性のファンが多いことを改めて理解することができる笑顔だった。
 「ありがとう真。それじゃ、食べよっか」
 俯いている私の視界に入っているローテーブルに白い箱が置かれる。
 両隣の座面が沈む感覚と共に春香と真が同じソファに座り、春香が箱を開いた。

 「じゃーん!千早ちゃんがいっちばん楽しみにしていたプリンタルトです!」
 「ちょ、ちょっと春香!?」
 「わー、美味しそうー!」
 三者三様、私たちは高音の大声を一つずつあげた。

 私はそこまでに楽しみにしていたわけじゃないわよ。
 楽しみにしていなかったんだ……。
 そういう意味じゃなくて!
 
 表情の色を暗くして肩を落とす春香をみて心臓が妙な拍動をしだす。
 鐘を打つように、力強く叩かれる感覚。鳴り響く音が痛む。
 「春香と千早って、初々しいカップルみたいだね」
 
 春香の機嫌を少し損ねてしまって慌てふためいていたら、真がひょんなことをいいだしてさらに焦る。
 「ま、真!」
 「だってカフェかなんかでちょっとした喧嘩になって女性をなだめる男性みたいだよ、千早」
 「千早ちゃんとは仲良しだもん、ね、千早ちゃん」
 打って変わって表情を咲かせる春香。演技だったことに気づくのはその後すぐだった。
 「仲良しって、いえそうなんだけれど……」
 言葉を詰まらせてしまい、ふと春香と真の緩みきった表情を見るとぐぅの音も出せないくらいほど萎縮してしまった。
 
 この二人は……まったく、もう。

 その後も春香の一挙手一投足に振り回されながら、そして真の私を茶化す発言に踊らされながら、私たちはプリンタルトを頂いた。
 でも肝心の味は覚えていない。
 その時既に、体全体で彼女たちの言葉の甘味を味わっていたから。  

 ・ ・ ・

 「お菓子かぁ。あの人に作ってみようかなぁ」
 お茶を出したのはボクなんだから片付けるのもボク。
 それが当たり前だと言い張り、給湯室で食器を洗う。お湯の温かさが全身に伝わってきて身震いする。
 「あのデレッととろけるあまぁい雰囲気、洗い物の手伝いで壊すわけにいかないじゃん。本当に仲がいいんだから」
空笑いを浮かべる。嫉妬とか羨ましいとかじゃなくて、単なる呆れを笑いに含ませた。

 「ボクも、今年はあの人のために……へへ、よーし!春香からバレンタイン用のレシピを聞こーっと!」

 大好きな人の顔を浮かべて両頬を上向きにするボク。
 きっとさっきまで春香たちを呆れていたボクが目の前にいたら、自分もか、と突っ込まれるんだろうなぁ。
 
 好きな人の作ったものを食べて、好きな人と痴話喧嘩をして、青ざめたり赤くなったり。
 いいなぁ、こんな関係。
 呆れが羨望へと感情が移り変わる。
 
 そんな呆れられる感情を胸に留め、ボクは水道の蛇口を締めた。 
 
 手の温かさはもうお湯だけであったまったものじゃないと苦笑いを浮かべたのだった。
 



 
 


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COMMENT

またもサフィズムな展開

どうも「一枚絵で書いてみm@ster」に参加中の月の輪Pです。
アイマスではヘテロな自分なので、やっぱコメントがうまくできないかもです。

春香というスィートに酔う千早が、真の目を通して、キラキラしていました。
きっとプリンタルトも、バニラエッセンス過多のドンガラガッシャーンな味なのでしょうね!

2010.02.07| URL| 月の輪P #VFkxEMUo [編集]

…目覚めてしまったら、どうしたら良いのですか。

初めまして。「一枚絵」に参加いたしましたエイジです。
月の輪P様ではありませんが、私百合はノータッチな人生を送って参りましたのに、目覚めてしまったら、どうしたら良いのですか。

素晴らしいはるちはでした。
自覚の無い千早ちゃん(これがまた、女性同士になじまない私を投影してしまうのですが)がデレデレじゃないと自己に言い訳をしている様子は、非常に愛らしいです。また、この自分に言い聞かせている内容が無意識に口に出ていて聞かれること、が次の「転」につながる構成は、巧みに出来ていると思います。
また、最後の方の表現、
「その時既に、体全体で彼女たちの言葉の甘味を味わっていたから。」
には、ああ、もうだめです、と思いました。この台詞回し! 私を身悶えさせてどうするのですか、ふじゃん様は!?

これはもう、私もちははるを、百合を書くしかないと決意いたしました。百合は初めてのことですので時間がかかってしまうとは思いますが、完成いたしましたらぜひご感想ご批評をお願いいたします。
それではまたいずれ。

2010.02.07| URL| エイジ #- [編集]

感染力が強い、というのは作品の力が強い、
という事ですよね。良いと思います。

非常に包容力のある真が微笑ましい限り。
なんかもう、仲人さんから式の神父さん役まで、
なんでも出来ちゃいそうな人の良さを感じます。
こう考えると、いいポジションですね。

春香さん千早さんはお菓子繋がりが良く似合います。
甘い物大好きって訳じゃないけど、春香が作ったなら…
みたいな。

2010.02.07| URL| ガルシア #MhlNZB0o [編集]

心も身体も

虫歯になりそうな程甘い春香さんのお菓子と
春香と千早の関係 おいしく頂きました
 はたからみてる真しては、にやにやしつつも
甘さに自分の心が溶かされていますよねぇ
 そして、氷の心の千早もこの甘さと温かさが
あったからこそ温かみのある千早に進化できてるのかなと 千早の求めてるものってやはり暖かさだと
思います

 春香さんと千早さん・・・お幸せにね

2010.02.08| URL| トリスケリオン #UzUN//t6 [編集]

はじめまして。

とろけるような甘さって言うのはこういうのを言うんでしょうね。いやもう、ご馳走様です。

顔を真赤にしてうつむく千早を想像してニヤニヤ、それを見てる春香と真を想像してはニヤニヤしてしまいますね。

2010.02.08| URL| 肉塊 #mQop/nM. [編集]

春香さんへの想いを無意識に呟いてしまう千早さんは好きですか? 大 好 き で す !!
自分への想いを無意識に呟く千早さんを後ろからこっそり眺めている春香さんもまた…ふぉぉ…くわぁええです。ふじゃん先生はいったい僕を何度キュン死させたら気がすむのでしょうか…ごふぅぶはぁ
そんな春香さんと千早さんを微笑ましく見守る真さんもまた素敵で。そんな三人の交友関係に心がほわっと温かくなりました。
素晴らしいSSをありがとうございました!

2010.02.10| URL| 小六 #- [編集]

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