スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

はるゆきss:かわいいのはどちら



はるゆきss:かわいいのはどちら


こんばんは、ふじゃんです。
今回は一枚絵で書いてみm@sterに提出の文章ではなく、以前から書いていた普通のはるゆきssです。



読まれる方は続きからどうぞ。











 「春香ちゃん。私は一体誰でしょう?」
 空気にくるまれた細い声。
 顔の脇から見えるピーナッツクリームを連想させる髪色。
 ネイルをしていない、けれども事務所の照明によって光を受けて煌めく爪。
 手入れをしっかりしてるんだろうなぁ。と自分の考えに浸る。
 そして、彼女を包む見慣れた、白いワンピース。
 
 明らかにそれは

 「雪、歩……?」

 そう。雪歩で間違いないはず。でも

 「違うよ。私は、天海春香だよ」

 彼女はいつもの顔をしていなかった。代わりに
 「雪歩が、お面つけているだけだよ、ね?」
 「うん。可愛いお面が私のロッカーの中に入ってたからつけてみたの」
 案外あっさりと自白をしたのにはちょっと意外でもうちょっと抵抗してほしかったなぁという不満を心のなかで漏らす。

 そう。雪歩の顔を覆っているのはお面だった。
 口元は逆三角形で、作り物なアイドルとしては売れないと思うような笑みを表している。
 髪の毛は栗色で下の毛が外ハネしている、ちょっと垂れ目の女の子。

 ――お面の硬質な作りのせいなのか、デザインした人の技量が(申し訳ないけれど)微妙だったのか、はたまたモデルとなった「女の子」が普段からこんな笑みをうかべているのか。
 そのお面の彼女の笑みは、お世辞にも可愛いなんて言えたものじゃなかった。

 だから思わず聞いてしまった。 
 「そのー、私の顔によく似たお面のどこが可愛いの?雪歩」
 「『よく似た』じゃなくてそのまんま春香ちゃんでしょ。」

 私が半ば恐怖を感じるお面の向こうからのくぐもった声は、純粋に良い物をもらえて嬉しいという気持ちがこもっていることがわかってしまった。

 雪歩は可愛い――私から見たら怖いだけの――天海春香のお面を纏っていた。


 ・  ・  ・


 「ところでそのお面、誰が雪歩のロッカーに入れたんだろうね」
 「あ、メモと一緒に入ってたんだ。読んでなかったけど……」
 
  読まなかったの?
  春香ちゃんのお面に夢中だったから。
  そ、そんなに嬉しかったんだ。
  うんっ!

 ――私だったら絶対に喜べない。自分に似せて作ったなんてそもそも事情がわからなければ気味の悪い物だし。
 でもこうやって雪歩が喜んでる姿を見られたのはよかったかなー。できたらお面を外してその表情を見せて欲しいけれど。

 ワンピースのポケットから折りたたまれた紙をだし、雪歩は読み始めた。
 「えーっと『今度765プロで新商品を売り出すことになったの。それでまず、試作品として春香ちゃんにそっくりなお面を作ってみました。本人に出来栄えを聞くのはなんだかこそばゆいので、雪歩ちゃんから聞いてみてね。 by小鳥』……小鳥さんからみたいだね」

 メモ紙を差し出されたので受け取り、自分で流し読みする。
 「なんだかこそばゆい」の部分の文字が他の文字より歪んでる。笑いを堪えながら書いたことを密かに語ってる。
 小鳥さん、お面の私がおかしいと思うなら私たちに見せないでくださいよ。もう。

 今いない小鳥さんに密かにつっこみをしていたら髪と軽いものがこすれ合う、小さな音が聞こえた。
 私がちょっとした推理をしている中、雪歩は漸くお面を外していたみたい。
 
 「うーん」

 私とお面の顔を交互に見遣る雪歩。
 ちょこっと首をかしげている姿は愛くるしく、少女漫画に出てくるあどけなさを持った女の子のように思えた。実際そうなんだけど、お面という比較対象との差が激しすぎて改めて思っちゃう。
 「……の方が可愛い」

 
 え?


 「雪歩、今なんて言ったの?」
 「えっ!き、聞こえてたの!?春香ちゃん、ぼーっとしてるしちっちゃい声で呟いたつもりだったから聞こえていないと思ったのに……」
 人肌くらいの緩やかな熱で徐々に溶けていく雪のように、雪歩の声は最後、静かに溶けていった。
 頬は逆に朱い椿が咲いたかのように瞬時に染まった。
 ちょっとした、いじわるをしたくなる顔だった。

 「聞こえなかったから、もう一回言って欲しいなぁ」
 頬が緩んでるのが自分でもわかる。目の前であたふたしだす雪歩が可愛いんだもん。
 「き、聞こえないように言ったから聞こえなくて当然だよっ。もう一回なんて言わない!」
 「あそぅ……雪歩は私に言えないことを言ってたんだね。なんか寂しいなぁ」
 「あ……そんな、言えないことってわけじゃないけど……」
 「それじゃあ、言って欲しいなぁ」
 
 頬を膨らませ俯き、小さな子供の拗ねた様子を雪歩に見せる。
 本当はなんて言ったのか聞こえていた。でももっとちゃんと言って欲しかったから。
 だって雪歩が私にそんなことを言うときって、あんまりないんだもん。

 「雪歩」
 顔をあげる。
 未だに声ならない呻き声をあげている雪歩にダメ押しで名前を呼んでみる。声に僅かな艶を乗せて。
 
 「……お、お」
 「お?」
 瞬間、息を思いっきり吸う雪歩。
 空気を一気に吸い込む音が妙に脳へ伝わってくる。
 
 「お面の春香ちゃんより本物の春香ちゃんの方が可愛いですー!」
 ぎゅっと拳を握って目を堅く瞑った雪歩は彼女とは思えない声量で叫んだ。
 
 メガホンを使ったかのように事務所内に響く声。
 人がまばらだった事務所内とはいえ、少数はいて。ぐるっとこちらを向く首と首。
 あー、これじゃあこっちまで恥ずかしくなってきちゃうじゃん。

 「ゆ、雪歩……案外大胆だね」
 今度はこっちの頬が熱くなっていく。
 「だって、私のいっつも声小さいから、聞こえる声ってこのくらいかなって」
 「まぁ、そうだけど。雪歩、周り見てみな?」
 え、と首を左右に振って辺りを確認する。
 雪歩の首の動きに合わせて、こっちを見てた目線は一気に明後日のほうを向きだした。見てはいけないものを見てしまったかのように。背徳感が漂っていた。
 
 「わ、あ……え、うと。春香ちゃん、ごめんなさい」
 「いや……。でも雪歩がそんなこと言ってくれるのはなかなかないから、嬉しかったよ」
 
 お互いがお互いの瞳を見つめ、顔を染ながら小さく笑い合った。

 

 もし雪歩のお面があったら、今の雪歩みたいに喜んだり、はしゃいだりしたかもしれない。
 でも、やっぱり。
 こうやって私と同調して笑い合ってくれる雪歩のほうが、綿毛のように柔らかい笑みを浮かべる雪歩の方が好きという考えに落ち着くと思う。
 
 だってあなたは、そのくるくる変化する表情で私が好きと叫んでくれたんだもん。




スポンサーサイト

COMMENT

拝読しました

最近のふじゃんさんの作品は、表現方法が綺麗だなぁ
とほれぼれします
 「人肌くらいの緩やかな熱で徐々に溶けていく雪のように~」
「頬は逆に朱い椿が咲いたかのように~」
 この辺りの表現なんて本当にキャラにとっても
似合った表現ですよねぇ

そして、ほめと比べられてどうよって気分も
ありますけどw 雪歩に心から好きっていわれて
春香としては嬉しくないわけないですよね
 そして、雪歩も春香が好き打からこそ・・・
自分の気持ちを最大に振り絞っての告白
・・・たまりませんわ、本当に

2010.02.22| URL| トリスケリオン #UzUN//t6 [編集]

私は、あなたを理解したいです。

こちらでは初めまして。「一枚絵」に参加しておりますアリスと申します。

私は、あなたを理解したいです。
ふじゃんさまは、私には無いロジックとエモーションをお持ちです。私には無い、でもそれに価値があると、持っていないはずの私にすら知らしめ得る、何かを。

回りくどいですね。私は、あなたがうらやましいのです。あなたのようになりたいのです。

ふじゃんさまの過去作品、つぶさに拝見いたします。どこかでお会いしたときお暇でしたら、お相手くださいませ。それでは。

2010.02.28| URL| アリス #- [編集]

管理者にだけ表示を許可する

TRACKBACK

トラックバックURL:

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

cork_board template Designed by ARCSIN WEB TEMPLATES
TMP Customized by I'm looking for.
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。